聖路加国際大学看護学研究科在宅看護学専攻上級実践コース 2016年入学

[自己紹介]
〈名前〉
岩本 大希(いわもと たいき)

 

〈現在の所属〉
WyL株式会社代表取締役 ウィル訪問看護ステーション江戸川所長

㈱ゆいんちゅ取締役 ウィル訪問看護ステーション豊見城

在宅医療支援機構㈱取締役

㈳OMAHASYSTEMJAPAN理事

㈳東京都訪問看護ステーション協会研修委員長

 

〈看護学生、臨床時代のバックグラウンド〉
2010年3月 慶應義塾大学看護医療学部卒業

2010年4月 北里大学病院の救命救急センターに就職。

2年間従事し、「家にかえりたい」と言う人の受け皿になりたい気持ちが芽生え、また退院や転院がスムーズにいかないことで救急車受け入れの困難さまで影響を及ぼす「ベッドの玉突き事故」の存在を感じ、さらに高齢な方がCPA等で運ばれ蘇生を試みながらも3次救急のICUや初療室で最期を迎えることのジレンマから搬送イベント前の生活時点から意思決定の支援や権利擁護のための在宅ケアに関心を覚え、訪問看護への転職を決める

2012年4月 ヘルスケアベンチャーの訪問看護事業の立ち上げから参加し、4年間従事

2016年4月 WyL㈱設立 6月に東京都江戸川区にウィル訪問看護ステーション江戸川を設置。同時に聖路加国際大学看護学研究科在宅看護学専攻上級実践コースに入学

2019年3月 修了して現在に至る

 

〈連絡先〉
*読者からの相談を受けても良いという方のみご記入ください。

Mobile:080-4206-4767 

Mail: t.iwamoto@wyl.co.jp  taiki.tenpa@gmail.com

Facebook: https://www.facebook.com/taiki.iwamoto.1

URL: http://www.wyl.co.jp/

Twitter:@taikitenpa

 

 

[受験]

〈その大学院を選んだ理由〉
 初めに進学を考えていった経緯から述べたいと思います。臨床に出てから段々と思い始めたのは、日本においても学士号を持つ看護師は年々増加をしていますが、米国や英国を見ると修士号、博士号をもつ看護の専門家たちが社会の中で多くの課題解決や実装をしていることを考えると、同様に日本も社会からの要請が今後高まるであろうと考え始めました。米国のように10年程度で実践家であっても修士号・博士号を修了していることが珍しくない状況になるだろうと漠然と考えていました。そういう理由から元々自分に研究職は向いていないと思いつつも、看護師として社会により良い影響力を持つ(実践でも研究でも事業でも)ためには、大学院進学は必須になるだろうと関心を持っていました。

背景としてそんな漠然とした感覚を持ちながら、訪問看護に従事をし始め、在宅ケア領域での看護実践の魅力にのめり込んでいき、のめり込むほどに自分の未熟さを覚えることが増えていきました。同時に所属していた法人で訪問看護事業の事業責任者および法人役員としての経営責任も負う立場となり、在宅ケアの需要が高まる中で地域や従業員にとってより良い運営をしていくために経営についても学んでいく必要があると考えはじめました。いずれ大学院に進学するなら、実践能力も付随して高めるために在宅看護CNSコースに行くか、より良い事業や経営を行うために経営修士号(MBA)に行くか、自分の進むべきキャリアの順番について考え始めました。いずれのコースにせよ家庭の都合もあり仕事を辞めることは難しいため働きながら通えるコースがないかなあなどと考えつつ、2016年までは具体的に進学の目途などは検討までは至っていませんでした。

そんな中、独立することになりそれから先は更に実践能力も経営能力もどちらも力をつけていかなければならないタイミングが来ました。改めて自分を見つめなおしたときに、僕は看護実践がなによりも好きで大切にしていきたいことを確認し、今後外部環境や役割が変わったとしても自分自身を臨床(現場)から遠ざけないため自分を縛る目的と、臨床能力を高め周囲に良い影響を持つ目的に、まずは専門看護師を目指すことにしました。MBAは後からでも気が向いたら取りにいくことが可能ですが、CNSはもし実践から離れることになってしまうと目指すことが困難になる可能性があるのも理由でした。

とはいえ起業を決意した時点では当然、自分の事業に集中する必要があると考え、進学はそこから3~5年ほど経てからにしようと考えていました。しかし、2016年1月下旬頃だったと記憶していますが指導教官となる教授の元へ独立することのご挨拶に伺い、そこで雑談のついでに将来的にCNSコースにも通いたい旨について触れたとき、その年の後期受験の願書が間に合うのでせっかくならこのタイミングで受験してみたらどうかと薦められました。正直に言えば起業のタイミングで進学するのは一般的に考えれば無茶がある、と思いましたがこれはご縁だと考え受験に至りました。受験を決めた理由はもちろんそれだけではなく、前述のように在宅看護のCNSコースを希望しており、仕事と並行できるコースがあったこと、仕事をしながらですので通学できる地理的範囲であること、また指導教官と研究室の皆さんと以前にお仕事でご一緒したことがあり研究室の魅力にひかれていたことなども相まって受験することを決めました。

 

〈試験内容〉
英語記述式試験、小論文、面接

※時間や内容などはあまり覚えていませんが、それぞれだいたい90分~120分くらいだったかと思います。

 

〈受験の時に苦労したこと〉
 後期の願書が間に合うぎりぎりのタイミングで受験を決めたこと、さらに自分自身の独立起業の準備もあったため、誠に恥ずかしながら受験のための準備が何もできずそのまま試験に臨みました。幸い、英語や小論文などは特段の難しさはありませんでした(と言ってもぎりぎりだったと思いますが)ので無事に合格することができました。

  

  

  [入学]

〈入学前に準備したこと〉
 一つは仕事との調整で、もう一つは資金の準備でした。仕事の調整については、授業スケジュールが出てからでないと具体的な通学頻度や曜日などが確定しなかったことから、苦労したことを覚えています。一般的には退職証明書などを提出する義務があることなど、学業優先であるのが大学院の基本態度だと理解しているので、仕事と並行する3年コースだとしても、学業のスケジュールを優先できるように調整を図りました。工夫としては具体的なスケジュールのイメージを手に入れるために先輩などから昨年度のM1の授業スケジュールなどを手に入れたりなど、ある程度先に段取りができるようにした覚えがあります。

 資金の面では、独立起業の資金と併せて入学・在学のための資金を調達しました。僕の場合は基本的に借り入れでまとめて調達をしました。仕事もしていることから奨学金の対象としては微妙だったことから、親族などと銀行から借り入れをしています。

  

  

[大学院生活]

〈授業の様子〉
 1年目の前期は主にその他のコースの同級生と一緒に必修単位や選択単位などを集中して受けていました。授業を優先して受講しながら他の日は全て仕事をしながらでしたので、課題などは夜に行うことがほとんどでした。

 大学院に進学してもっとも良かったと思うことの一つが同級生の存在です。1年目の必修・選択授業では他コースの人々とディスカッションやグループワークの機会が頻繁であり、多様な領域の看護職たちが一同にそれぞれの考えや領域ごとの知恵や知見などをぶつけ合い、ディスカッションをすることは何よりも刺激的でした。臨床にいると基本的には同属性の中で組織やチームに従事するため、領域を超えて同じ看護職同時で常に議論を行う環境は恵まれた環境でとっても貴重な時間だと思います。今でも同級生はお互いの専門性で困ったことを補完し合うコミュニティとして機能していてお互いが貴重な存在のグループになっています(具体的にはLINEグループなどでつながり続け、個人が疑問や依頼など投げかけるとすぐに該当する専門家から返答があるような繋がりになっています)

 個人的にとても反省していることとしては、これらの授業においてはグループワークなども多く、チームを編成した場合に、僕は仕事の都合がうまくつかずにグループで課題をやっつけるMTGなどの集合にどうしても合わせることができないことが多く出てしまいました。その場合は個別分担などで別途対応するのですが、ディスカッションができず迷惑をかけてしまうことが度々あり、もう少し仕事との折り合いをつける努力をするべきだったと振り返っています。最終的には宿題型のグループワークなどでは一人チームを作ってもらい、単独で臨めるようにお願いする場面などもありましたが、本来の講義プランからは逸脱し、教育効果などを損なってしまうことだったと思います。

 

〈家庭との両立のコツ〉
 家庭との両立はできたとは言えなかったと思います。妻には迷惑をかけっぱなしでした。学校や実習に行く日は休日扱いとし、他の日はフルタイムで仕事をしていたことや、仕事の合間や夜に課題やレポートなどを仕上げるため、相対的に家にいられる時間が少なかったです。とても理解をしてくれていましたが、それがなければ学業の継続は困難だったと考えます。

 

〈大学院にかかる費用と、そのやり繰りのコツ〉
 2年間でも3年間でもトータル300万円程度なのは変わりありませんが、3年間のほうが半期ごとの費用支払い額はその分低いため、その確保は重視していました。私は通学も電車で1時間弱のためそれほど通勤に費用はかかりませんでしたが、演習や実習は遠方に行くことや、長期で通う場合の旅費交通費は以外とかさみますので、事前に先輩などから費用感などの情報を確認しておくのが良いと思います。

やりくりについては各人の都合で異なると思いますが、僕の場合は扶養する家族がいたこともあり、家族も含めた3年間の生活費用や授業料などをストック(貯蓄・借金)から切り崩していくとあっという間に尽きるため、ストックよりフロー(収入)の確保を重視していました。ただしフローを増やそうとすると仕事を増やすことと同義のため、本末転倒にならぬように、前期後期の授業スケジュールや、演習実習のタイミング・スケジュールなどとのバランスを図ることが最もやりくりが難しかったと思います。周りの同級生らも、全く仕事をしないで過ごすことは生活の上でも困難なため、アルバイトなどの収入の確保バランスにそれぞれ工夫をしていたように思います。


〈卒後の進路〉
入学と同時に独立して始めた事業(訪問看護ステーションなど)が、それなりに軌道にも乗っているため、引き続き現場に出ながら、自分の組織や関わる組織に3年間で学んだことを還元していきたいと考えています。

 

 

[あなたの研究、実習の様子]
 演習・実習については、学生自身に目標や計画の立案、実習先施設の選定希望の裁量が概ね任されていることもあり(もちろん助言などを受けますが)、特に演習・実習施設の選定については、かなり僕の個人的な関心から決めました。今までの訪問看護実務の中で「あのステーションすごいな~働いてみたいな~イケてるな~学びにいきたいな~」と個人的ファンになっているステーションの中から、演習や実習の目的目標と掛け合わせて(不純な動機で申し訳ないですがあくまで選定のきっかけとして)、決めていきました。また仕事をしながらは変わらないため、通える範囲の同じ都道府県内で選定することができたことは結果的にとてもラッキーでした。これは施設数の多く集まっている東京都内に僕自身が住み学校も都内であることが背景として大きかったと考えています。

 そのような元々関心の高かった施設が受け入れをしてくださったこともあり、演習や実習は日々とても楽しく前向きにPDCAを回すことができたように思います。もちろん壁に当たってうまくいかないことも多々ありましたが、総じて積極的に学びと実践を繰り替えすことができました。特にメインの実習施設では、約6か月間の期間を設け2事例に長期的に介入を行うことができ、CNSとしての高度実践、倫理調整、相談対応、組織へのフィードバックなどを網羅的に行うことができ、看護師人生において最も成長角度を上げることができた半年間でした。

 実習のスケジュールについては、2~3日/週で曜日をある程度対象者の訪問に合わせて固定し、毎日実習施設へ通わない代わりに長期的に介入をしていくことを行いました。実習目的としても慢性的な対象者への長期的な介入がテーマとして重要だったこともあり、施設側も寛大に受け入れてくださり実現することができました。余談ですが、半年もいると実習生よりもアルバイト職員に近い存在になってきて、実習終了時にはスタッフのみなさんが送別会を開いてくださったことがとても印象的で嬉しかった思い出になりました。

  課題研究は、実習において介入を行った1事例をテーマに、ケーススタディ(事例研究)とし、意思決定支援の枠組みなどを用いて振り返って考察を行いました。6か月間という期間に、分類すると多種多様な支援や介入を行っており、それらを事例研究としてまとめるにあたっては、焦点を絞ることが難しく、また皆がそうであるかもしれませんが、自らの実践を言語化することの困難さ・苦しさが、大学院生活でのもっとも大きな壁となる場面でした。しかし、看護学の大学院ではこれが言語化していくことが主題でもあると思っていますので、私の3年間の学びそこに集約されました。

 

 
[大学院を目指す看護師に一言]
 総じて言えば、僕にとって進学したことは最高に良かったと感じています。仲間や経験、キャリアアップなど多々理由はありますが、最も大きいのは看護師としての実践能力を上げて言語化していく枠と覚悟とチャンスを持つことができ、そのスタートラインに立てた気持ちになれたことです。目の前の患者さんと、大きな視点での社会へ、看護師として寄与していくぞ、と思い切ってふんどしを締め直すことができた、ということです。

 もしかすると明確な目的や目標がないと進学しても意味ないのでは、と思う人がいるのかもしれません。一面的にはそうかもしれませんが、それがあっても、そうでなくても進学は悪いことではなく、これからの社会にとって修士号・博士号を持つ看護師が増えることは、個人的にとても重要な社会インパクトに繋がると思っています。それは住民や市民の健康に変化をもたらす可能性があるという意味で、あなたが進学することで目の前の患者さんに還元されることだと思うので。だからもし悩んでいるなら、そんなに悩みすぎなくてもよいと思います。

 ただし、多くの先輩方がそうであったように楽な工程ではなく、とっても苦しみながら自分自身や自分の実践に向き合うことになり、さらには経済的な側面や体力、ライフステージの変化など、外部環境の変化や様々な要因で想定通りにはいかないことのほうが多いように思いますので、それを受け入れるつもりでいられると良いと思います。

 進学される方に僭越ながらアドバイスを送るなら、個人的に、それらを乗り越えるために2つ大切だったなと思うことがあり、ひとつは共に入学した同級生との支え合いでした。なので同級生は相互に支え合う存在で良き関係があることが望ましいと思います。もう一つは自分と向き合って苦しいときに、拠り所になる軸を決めておけると良いように思います。大学院に進学した理由や夢、目標、なんでもよいと思いますが、あまり変わらない立ち戻るポイントを自分の中に見つけておける(過程の中で見つかることもあると思いますが)と、支えになってくれるように思います。

 あとは、僕が修了できたくらいですから、皆さんならきっと大丈夫だと思いますので、もし進学してみて「自分には向いてないかも~」と思っても、できるだけ諦めないでやってみれば、気が付いたら修了できているでしょう!※健康を維持できる範囲でという意味ですので、健康が損なわれるなら途中でも休息をとるほうが良いと思います。